伸びた枝を短くする手入れから、不要な枝を付け根から取り除く樹形づくりへ。又枝切りは、枝を抜いた後の切り口まで考えて使う、盆栽のための道具です。
選ぶ基準は、切る位置の枝の太さ、枝元へ刃を入れられる大きさ、刃の形、素材。この記事では用途と選び方を整理したうえで、基本形の喜久和1204、ステンレス製の喜久和3201、丸刃の兼進No.4を比較します。
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道具の使い分け / 選び方 / 3モデルの比較 / 使い方とお手入れ
又枝切りとは
又枝切りは、幹や枝から出た不要な枝を、付け根から切り取るための道具です。向かい合う刃で枝元を挟み、切り残しの突起を小さくしながら処理します。
一般的な鋏との違いは、枝元に刃を当てやすく、切り口をくぼませるように切れることです。基本形・丸刃ともにこの働きがあり、枝を取り除くことに加えて、傷が覆われた後に枝元の突起が目立ちにくい仕上がりを目指します。
「巻き込み」とは、切り口の縁から組織が育ち、傷を覆っていくこと。仕上がりは切り方だけでなく、樹種や樹勢、傷の大きさにも左右されるため、必要な枝を選び、適した時期に作業することが大切です。
又枝切りを用意するタイミングは、枝の長さを整えるだけでなく、枝数や枝の配置を見直して、不要な枝を元から抜く作業を始めるときです。
盆栽鋏・剪定鋏・コブ切りとの使い分け
道具は枝の太さだけでなく、「枝を残して短くする」「枝を付け根から取り除く」「残った切り跡を整える」という作業の違いで使い分けます。
小枝や芽を整えるなら、盆栽鋏・芽摘み鋏
伸びた小枝を切り戻す日常の手入れには盆栽鋏を、細かな芽や込み合った枝葉の整理には芽摘み鋏を使います。枝の途中を切って長さを整える作業と、付け根から枝を取り除く作業で使い分けます。
形や用途の違いは、盆栽鋏の選び方・3モデルの比較と、芽摘み鋏の選び方でも紹介しています。
やや太い枝を切り戻すなら、剪定鋏
盆栽鋏では切りにくい枝を途中で切り戻すときは、枝の太さに合う剪定鋏が選択肢になります。又枝切りは、枝の付け根を処理したいときに使います。
残った突起や切り跡を整えるなら、コブ切り
コブ切りは、丸い刃で切り残しや突起を取り除き、切り跡をくぼませて整えるための道具です。又枝切りが枝を取り除く作業の中心になるのに対し、コブ切りは残った部分の処理に役立ちます。
丸刃又枝切りには、この二つの役割を兼ねる形状のものもあります。コブ切りを追加するかは、手持ちの又枝切りで処理した後に、さらに整えたい部分があるかを基準にするとよいでしょう。
又枝切りを選ぶときのポイント
1. 実際に切る枝元の太さを確認する
まず確認するのは、枝先ではなく、実際に刃を入れる枝元の太さです。その太さを目安に、メーカーが示す切断能力を確認します。全長は道具のサイズ、切断目安は対応する枝の太さとして、分けて見ましょう。
今回の喜久和2モデルは、いずれも10mm以下の生木が目安です。生木とは、生きている枝のこと。同じ太さの枯れ枝にもその数値を当てはめず、硬い枝や太い枝には鋸などの適した道具を使います。
2. 基本形か、丸刃かを作業から選ぶ
基本形は、刃の縁が比較的まっすぐなタイプです。不要な枝を付け根から取り除く作業を中心に、又枝切りの一本目を揃えたい方に向いています。
丸刃は、枝を切った後の切り跡の処理まで考えて選びたい方に向いています。兼進No.4は、丸い刃先と、直刃タイプより薄い刃によって、切断後に彫刻刀などで削り直す作業を少なくすることを目指した形です。
3. 素材は、錆びにくさと予算から選ぶ
鋼製は、使用後に汚れと水分を取り除き、防錆油などで保護しながら使う選択肢です。錆びにくさを重視するなら、ステンレス製が向いています。
同じ基本形の喜久和1204と3201では、切断目安はいずれも10mm以下の生木です。用途を揃えたうえで、錆びにくい素材にどれだけ予算をかけるかを考えると選びやすくなります。
切れ味や切断能力は、素材名だけで決まるものではありません。素材は防錆の管理と価格、刃の形は作業と切り跡、と分けて比較しましょう。
4. 全長に加えて、刃先の大きさを見る
枝元へ刃を入れられるかを考えるときは、全長だけでなく、刃先の幅や厚み、周囲の枝との間隔を見ます。ミニ盆栽や枝が密集した場所を主に扱う方は、小型・先細のモデルから選ぶと作業する場所に合わせやすくなります。
今回紹介する3モデルは、全長200〜205mmの大サイズです。枝元に刃を入れる空間がある作業を想定し、同程度の全長で形と素材を比較します。オンラインでは刃先が分かる写真と寸法を確認し、持ち手の大きさは使い慣れた道具を参考にするとイメージしやすくなります。
用途に合わせて選びたい3つの又枝切り
基本的な枝抜き用なら喜久和1204、同じ基本形で錆びにくさを重視するなら喜久和3201、削り直しを減らす丸刃を選ぶなら兼進No.4。形と素材に違いのある3モデルを紹介します。
| モデル | 形・素材・全長 | こんな方に |
|---|---|---|
| 喜久和 又枝切 大1204 | 基本形・鋼製・約205mm | 基本的な枝抜き用を揃えたい方に |
| 喜久和 ステンレス又枝切 大3201 | 基本形・ステンレス製・205mm | 基本形で錆びにくさを重視する方に |
| 兼進 丸刃又枝切 大No.4 | 丸刃・鋼製・200mm | 切り跡の削り直しを少なくしたい方に |
喜久和 又枝切 大1204|基本的な一本を揃えたい方に
全長約205mm、重量約186gの又枝切りです。幹から出た不要な枝を付け根から切り取り、切り残しの突起を小さくするための基本形。メーカーの切断目安は10mm以下の生木です。
枝数の整理や樹形づくりに使う、初めての又枝切りにおすすめです。枝抜きの基本的な一本を揃え、使用後の汚れ落としと防錆を行いながら使いたい方に向いています。
錆びにくい素材を選びたい場合は、用途と切断目安が共通する次の3201と、購入時の価格差を比べるとよいでしょう。
喜久和 ステンレス又枝切 大3201|錆びにくさを重視する方に
全長205mm、重量175gのステンレス製又枝切りです。1204と同じく枝を付け根から取り除く用途で、メーカーの切断目安は10mm以下の生木です。
基本的な枝抜き用を揃えながら、防錆の管理をしやすい素材を選びたい方におすすめです。水や樹液に触れる道具だからこそ、素材の錆びにくさを重視したい方に向いています。
1204との選び分けでは、基本形の用途を共通の前提にして、素材の違いと価格差を見ます。使用後に汚れと水分を拭き取る手入れは、ステンレス製でも続けましょう。
兼進 丸刃又枝切 大No.4|切り跡の削り直しを少なくしたい方に
全長200mmの鋼製丸刃又枝切りです。丸みのある刃先と、直刃タイプより薄く加工された刃が特徴。兼進の公式商品ページでは、生木の枝の太さの目安として約7〜12mmを案内しています。
メーカーは、枝を切った後に彫刻刀などで切り口を削り直す作業を少なくするための形状と説明しています。枝を取り除く作業に加え、切り跡の処理まで見据えて選びたい方におすすめです。
既に基本形を持ち、枝を抜いた後に切り跡を整える作業が多い方の追加の一本としても検討できます。枝抜きと、その後の削り直しをまとめて考えたい方に向いています。
又枝切りの使い方とお手入れ
1. 長い枝は短くしてから、枝元を処理する
作業前に、取り除く枝と残す枝を決めます。剪定する時期や切る量は、樹種と樹の状態に合わせましょう。
長い枝や枝葉が作業を妨げる場合は、適した鋏や鋸で先に枝を短くして、枝元へ刃を入れる空間を作ります。そのうえで又枝切りを使うと、刃を当てる位置と切り残しを確認しやすくなります。
周囲の枝や幹に刃がぶつからない向きを選び、枝を安定して挟める位置へ刃を当てます。太い枝を刃の先端だけで無理に切ったり、道具をねじって枝を折り取ったりせず、刃を閉じる動きで切りましょう。
2. 切り跡は、必要な範囲を少しずつ整える
枝を取り除いた後は、残った突起と切り口の状態を見ます。必要に応じてコブ切りや彫刻刀などで少しずつ整え、幹まで一度に大きく切り込まないようにします。丸刃を使った場合も、実際の切り口を見て仕上げを判断しましょう。
くぼませる深さや傷の保護は、樹種と傷の大きさに合わせて判断します。深くえぐるほどよいと考えるのではなく、残す幹や枝を傷めず、必要な範囲を処理することを優先します。
切断目安を超える枝や硬い枯れ枝には、鋸などの適した道具を使います。針金には針金切りを使い分けましょう。特に薄い刃のモデルは、無理な力をかけずに使うことが刃の保護につながります。
3. 汚れを落とし、水分を拭いて保管する
使用後は、刃の樹液や切りくずを取り除き、水分を拭き取ります。刃だけでなく、開閉する支点の周囲も確認しましょう。落ちにくい樹液には、刃物に対応したクリーナーを製品の説明に従って使います。
鋼製は、椿油などの刃物用防錆油を薄くなじませて保護し、湿気の少ない場所に保管します。開閉部の手入れにも、メーカーが案内する油を使うとよいでしょう。病気が疑われる樹を扱った場合は、別の樹へ移る前に、道具に適した方法で消毒します。
切れ味の低下だけでなく、刃こぼれやかみ合わせ、開閉の不具合も確認します。又枝切りは向かい合う刃の形と合わせが重要なため、不具合がある場合は販売店やメーカーに研ぎ・修理を相談しましょう。
作業と仕上がりに合う一本を
又枝切りを選ぶときは、切る枝元の太さと、刃を入れる空間を先に確認します。そのうえで、枝抜きの基本形か、削り直しを減らす丸刃かを選び、素材と予算で絞ると決めやすくなります。
基本的な一本なら喜久和1204、基本形で錆びにくさを重視するなら喜久和3201、枝抜きと切り跡の処理をまとめて考えるなら兼進No.4。これから行いたい作業に合う一本を選びましょう。



